それはまるで
なにもない 土の中から
ある日芽生える緑のように
湧きだしては満ちてゆく
泉のはじめの一滴のように

その感情はここにあって
当たり前に成長し
当たり前に貯えられて
そしていつかひとに
静かな
希望をもたらすもの
ひとみにうつるのは
愛しさのかたち
わたしを
受け入れてくれる
かもしれない
わたしを
愛してくれる
かもしれない
ひと雫の想いを
わたしに授けたひと
その姿はそこにあるけれど
今はきっと
わたしの奥底には気が付いていない

溢れる流れは
とめどなくここから始まり
あなたの
背を貫いて
こころまでとどくだろうか
わたしはそうして
はじめて言葉をおぼえた幼子のように
君の名をよぶ
君に
わたしを
気付かせる為に

そして
やがて僅かに
空気が動く
君が わたしを見る
少し目を細めた
わたしのお気に入りの表情で
わたしに
返事をする為に

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photo:(C) hirako