こころの鍵を取り出して
君の ドアをノックする
........開けて 入ってもいいですか?

勿論 とうに君からその鍵は渡されていて
決して黙ってもちだしたのではなく
きっと このまま差し込んでも
かちり と小さな音で
君のトビラは開くだろう

この中に 君がいる
本当の君がいるから
いつもの おちゃらけた三枚目などでは
全くない 君の気配を
感じている
乱暴に 開けて入っていいものではないことくらい
気は付いているから

このトビラの中君は息を殺して
わたしを試している

自分にとって敵か味方なのか
雑で 無神経なだけか
本当に自分を見ようとしているか
掌に渡されたこの鍵で
わたしを 見ようとしている
少し下から見上げるような君の
冷えた視線を感じるから

容易く放ってくれた
訪ねておいでよ と
いつでもいい、さぁ早く開けてごらん と
憎めない笑顔で
大抵は 惑わされてしまう

傷を 重ねて来たひとは
重ねたひとにだけ わかる何かがきっと ある

わたしは鍵を握りしめて
君のトビラをノックする
........開けても いいですか?

そのトビラのすぐ向こうで
君の気配がする
目を閉じると
その鼓動さえ
伝わる気がする

わたしは もう一度囁く

それを、許して くれますか

 

 

『ドア』

 

 

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