あたしに分けて
 甘い 吐息のしずく
 手のひらにうけとめたら
 ちいさな
 あたしのお皿に落とす

 指先でゆっくりと撫でれば
 きみと
 あたしのふたつの色が
 ぴったりと混じって
 複雑にからみ合う
 見ていてね
 決して そのふたつは
 新しい色にはならずに
 そのまま美しい
 渦模様を
 つくるだけ
 いいじゃないそれで
 何も 始まらなくても

 それは
 誰にも見えない あたしの 舌のうえ
 思い出したように溶けて
 そこで はじめて
 甘くひとつに
 ながれていく

 記憶のなか
 あの 一瞬だけ味わえる
 俯いたきみの香り
 それが 欲しくて
 抱きしめる時間、

 手のひらのなか
 からりからりと乾いた音で
 こぼれおちる
 きみの
 吐息
 透明な瓶のなか
 閉じ込める
 切なさ

 

 

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