四月海岸
陽がしずむ頃
ひっそりとした静寂が
肩から
夕焼けの色にかわる

もう一度会いたいと言わないのが
オトナだなんて信じた
約束に縛られたくないのは
君だって
あたしだっておんなじ

だけど
冬の日にふと
君があの海に行きたいねと
思い出したように言った
春まで
まだすこしだけある
届かない距離だけが
当たり前に横たわる

四月海岸
春になる日が来たなら
その日にいつか
君と行けたらいい

今より少し本当の大人になって
もう少し疲れてしまっていたら
四月の波は
眩しすぎるかもしれないけど

あたしはそれに似た照り返しを
閉じ込める手かがみのなか
目を細めて
光をうつす
そして紅をひきなおす
君の為

 

© .kan_u All Right Reserved.