まだ寒いのだけれど 良く晴れてて
もしかして もうすぐ春かなぁ と 思うような
梅の花のいい匂いのする 澄んだ日に
死んでもいいかなぁ と君と話したことがある
木々が春の支度を忘れずにし始め
時々 コートが重く感じたりする
皆が 息を吹き返す 生命の季節に
すれ違うように 消えてゆきたいと言った
どさくさに紛れるとか
そういうのが君は大好きで
一人だけ目立っちゃうなんてかっこ悪くって何か嫌だし、
いつもそう言っていたもんね
それが きっと君の美学なんだろう
人にはさ、
引き際っていうのがあるんだよ、
タイミングみたいな、ね、
自分なりにさ、人の言うことばっかじゃなく生きてるとさ。
そういうのって分って来るんだと思う。
無理せずに自然に生きていたらいいの、
草や木が芽を出して、枯れていくでしょう、
もっともっとなんて草や木は思わないもんね。
もっと良く見せようなんて、周りを気にして思わないもん。
季節の静かな移ろいを
人はいつか気づきにくくなった
忙しすぎたり
周りにかまけたりしすぎて
流れていく時の中で
季節が変わっていくよ と気がつくような
そういうリズムを持つ君は
空や 風や 太陽や
月の光で浄化する
君が 2月の青い空を仰いで
ゆっくりと 腕を広げる
まるで 春の光を感じた冬の木が目を醒ますように
そして大地から何かを得ようとするように
君の足は
少しぬかるんだ土を 強く踏みしめている
ああまた 変わっていく
時が移ろう
君の周りが少しあやふやになる
君が冬に紛れて
春に姿を消さぬ
ように
わたしは その境界を見届けなければ
しっかりと
君を失ってから気がつかぬ
ように
「早春」
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