君の
  そのからだの いろいろなところから
  のびてくる 見えない触手
  幽かな音と 空気を動かすのを
  感じて
  こころの 目を閉じる
  その 鋭敏な先端が わたしに届いて
  わたしを
  確かめはじめている

  優しくて
  何でも分かってくれそうで
  勘のいい君は
  実はとても 傷付き易くて
  慎重で
  他のなにかにこうして自分で触れるのも
  容易いことではなかった

  君がその笑顔と言葉の裏側で
  わたしに そっと触れるのを感じる
  だから
  なすがまま
  君をうけいれる から
  安心して
  いきなり 動いたりはしないから
  わたしが どういうものなのか
  納得出来るまで
  何度でも
  試して
  このまま
  待っているから

 

『触手』

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