疲れた と言って
テーブルにうつぶせたわたしは
ほんとうに いつか眠ってしまった
君の前で 不覚にも

幽かな動きが
わたしの髪をわける
揺り動かすことなく
君は わたしを醒ましていく
ゆっくりと
まるで 夜の闇のように
目を 閉じたままのわたしを

ほほに落ちた髪を
何度も丁寧に
静かに 肩へとわけていく
あらわになっていく
わたしの顔を
どんな顔で
君は見ているのだろう

君の指が
肩に集めた髪のしたの
わたしの首にふれてくる、
そっと
そっと生え際をたどる君の指先は
絹のようにこまやかで
思わず ため息を漏らしてしまいそう

まるで
目覚めているのを当に承知で
君は わたしを弄ぶよう

近付いて来た吐息が
ほほをかすめて
わたしの耳たぶに
そっと触れた

こころが震える
一瞬の
ecstasy

『指先』

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